GRFSは2012年5月末(日本語版は2012年7月5日)にPS3/XBOX360向けに発売されたTPSのアクション・シューティングである。同年7月にはPC版が発売されている。本稿はPS3版のオフラインキャンペーンを中心とした、GR原理主義者のためのレビューである。マルチプレイ部分はレビュー対象外とする。
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システム周り
GRFSは光学迷彩とTPSによるカバーアクションが大きな特徴となっている。キャンペーン中で光学迷彩は序盤に新装備として支給され、姿勢を低くすると自動的に効果を発し、立ち上がったり発砲しない限りはいつまでも機能し続ける。完全に見えなくなるわけではなく、そのときの姿勢やカバーの有無等で敵に察知される間合いに多少の差ができるようだ。
前作GRAWに続き今回も各種ドローンが登場する。現実世界でもこの分野は大幅な進化を遂げ小型化・高機能化が進んでおり、ゲーム中でも強力な携行装備として登場する。ちなみにGRFS発表当初の映像にあった隊員の肩からミサイルを発射するといった突飛な要素は人から戦闘用ドローンへと集約されている。そして戦闘用ドローンはキャンペーン中に一度しか登場しない。そのため戦闘用ドローンの登場しないミッションでの対装甲能力は近隣に待機する航空戦力への近接支援要請に頼ることになる。
ゲーム中に登場するオブジェクト、特に隊員が身を隠すのに使える遮蔽物には銃弾の貫通に関する抗弾要素が設定されており、いわゆるハードカバー/ソフトカバーの設定が行き届いている。大概の木製品や薄い金属板程度のオブジェクトはあっさりと貫通する。大口径のライフル弾クラスならば一般家屋も少々の壁ならあっさり貫通してしまうようだ。従って「とりあえず隠れておけば」というような安直さがなくなり、ゲーム中にほど良い緊張感が生まれてくる。
今回のGRFSがTPSによるカバーアクションということもあって、遮蔽物がらみのアクションが数多く取れる。低めの遮蔽物は上にのり出しての射撃または横からのぞくようにして射撃でき、投擲も上または横からの投げが選べる。遮蔽物を乗り越えたり遮蔽物から遮蔽物への移動もボタン一つで可能で、この辺は良くデザインされている。
また制圧射撃の概念も取り入れられており、制圧射撃を受けると遮蔽物に隠れた状態で頭を上げることができなくなり、射撃はもちろん遮蔽物の向こうの状況確認が制限され難しくなる。対処方法としてはその場に留まり制圧射撃が途切れるのを待つか近場の別の遮蔽物へ逃げ込むかのどちらかとなる。これは敵AIも同様のようだ。
戦闘ダメージの解決は難易度にもよるが銃弾の直撃なら2~3発程度で行動不能となり、遮蔽物越しであれば弾丸の威力が落ちるためかもう少し耐えられるようだ。難易度エリート以外では一度行動不能になると味方AIが救助に来るまでその場で待つことになる。時間内に味方が辿り着けなかったり、行動不能中に不運にも敵の追撃(流れ弾やFG)を受けるとそこで死亡となる。行動不能への移行に回数制限などはなさそうだ。ただしロケット弾等の命中すると常識的にただでは済まない攻撃を受けると即死してしまう。そしてそれらの攻撃は狙われている段階で画面に警報としてアイコンが表示されるため回避可能となっている。
携行する装備はガンスミスモードといわれる銃器設定が可能であり、照準器・銃床・銃口・サイドレール・ガスシステム・アンダーバレル・マガジン・トリガー・ペイントの9項目の設定が可能だ。これらの項目の中でキャンペーンを進めるにあたり大きく影響するのは、各種探知系装備や照準器・減音器・GLを載せるための銃口・サイドレール・アンダーバレルあたりだろうか。その他の項目はゲームになれないと違いを体感することは難しいだろう。
携行火器はミッション中に敵の遺留品やボックスから取替えが可能で、たとえば減音器が必要なシーンには周辺にボックスが配置され中に減音器付きの火器が収められていることが多い。
射撃は従来通りの狙点と注視点が連動し、クロスヘアの収束で精度を表す。一方、演出強化された部分もあり発射から着弾までにやや大きめの時間差があり、銃口の設定によっては飛翔中の弾体が描画される。基本的に弾道は直進し、放物線軌道はとらない。GL等の投射系は緩やかな放物線軌道をとる。
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キャンペーン
キャンペーンはシナリオ/ミッション共に弁解の余地なく一本道である。拠点を襲撃するのにプレイヤーの好みで回り込むような選択肢等はほぼ存在しない。その分、演出が増え、状況によっては早撃ちだけに特化した(プレイヤーが移動を制御できない)もぐら叩き的なモードも挿入されている。
キャンペーンシナリオは少々大袈裟である。一部の武器密売人とその援助を受けた私兵が巻き起こす騒動を扱うが、ミッションごとのちぐはぐなスケール感に人によっては違和感を覚えることだろう。
地形・町並みといったレベルデザインはとてもよくできており、昨今流行の高精細さといったものはないが「あるはずの物がある」「そこにあって欲しい物がきちんと配置されている気持ち良さ」等はGRシリーズとしては非常に高いレベルにある。
またゲームではなかなか扱いにくい一般市民や死体等も数多く配置されており、一部イベントシーンでは女性に対する重大な人権侵害を予感させるシーンもあったりと、GRシリーズとしてはずいぶんと踏み込んだ表現が見受けられる。そのためGRFSはPEGIやESRBにおいてシリーズ中もっとも注意喚起の多いタイトルとなっている。
キャンペーンはロケーションの異なる12のミッションからなる。各ミッションは幾つかのシーンから構成されており、シーンごとに経過が自動で保存されコンティニュー時の開始点となる。各シーン間にリアルタイムレンダリングで短めのムービーが入り、前後の状況説明とストーリーが進む仕掛けだ。シーンの進行過程は二つに分けられ隠密・侵入パートと派手にドンパチをやらかす戦闘パートからなる。侵入パートはGHOST隊員の存在や倒した敵の死体が露見するまで続き、一度露見するとそのまま戦闘パートへと移るようになっている。戦闘パートはシーン終了まで続くため、某スニークアクションタイトルのように時間が経つと何事もなかったように敵が元に戻ったりはしないので注意が必要だ。
各シーンは演出上の都合がない限り侵入パートから始まるが、この時効果を発揮するのが偵察用ドローンとシンクショットといわれる仕組みである。偵察用のドローンは前作GRAWでも登場しているが、今回は小型化したこともあって屋内の捜索にも使えるようになった。この偵察用ドローンを常に戦闘エリアに配置しておくだけでゲームの難易度を大きく抑えることができる。また偵察用ドローンの視点から本来プレイヤーの位置からは視認できない敵に対してもシンクショットの指示が出せる。シンクショットは4体までの目標をチームで同時に排除する機能で、侵入パートで味方AIに攻撃させる唯一の方法でもある。シンクショットは侵入パートのみで、戦闘/交戦状態となると使えなくなる。シンクショットはチーム/単独のどちらで使用しても便利かつ強力で、その気になれば侵入パートで接触する脅威の大半をこのシンクショットのみで排除できてしまう。
ミッション中、所々で室内制圧を要求される。あらかじめ決められたポジションに就くようマーカーで促され、味方AIを含めて全員が配置についた状態で決行するとルームクリアリングが始まる。この状態では時間進行が遅くなるいわゆるバレットタイム状態で、移動に関する操作は受け付けずひたすら室内に居る脅威を早撃ちするモードとなる。室内制圧が完了すると大概はムービーが入りストーリーが進行する。
キャンペーンの味方AIに関してはふんだんに配置された遮蔽物間を渡り歩くだけでもそれなりに動いているように見えるため、過去の作品に登場する味方AIのようなストレスは感じない。今回さらに光学迷彩という「ゲームAI特有の言いようのない愚直さに対する最強の言い訳」ができたため、隠密行動を要求される場面でも指示の煩わしさや思考上の欠点を明確に感じることはなく、むしろ足枷のはずされたAIが全編にわたり無双を繰り広げる形となっている。正直な話、プレイヤーが物陰でどうしようか考えている間に味方AIが大半の敵を掃討してしまうため、何が起きているのかを把握できないままシーンが進んでいく事が多い。
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総評
アクション部分等システム周りはとてもよくできていると感じた。射撃や移動速度などスポーツ寄りの味付けではあるが遮蔽物に隠れての銃撃戦はどことなくGRのチクチク撃つ感覚を思い起こさせる。
シナリオ・ミッション共に一本道ではあるものの、光学迷彩やステルスキルといわれるCQC要素が加わったことで、その一本道をこっそり行くか派手にドンパチやらかして進むかの選択がある程度できる(場合もある)のは救いと言える。
キャンペーンのボリュームは少なめで、シナリオの終わり方もプレイヤーを置き去りにするようなブツ切り感を覚える終わり方となっている。特にボリューム不足は初代GRを自作MODなどで腹を満たしてきたPCプレイヤーにとっては衝撃を受けるレベルだ。また悪いことに、味方AIがあまりに強力すぎて余計にボリューム不足を加速させているような印象を受ける。
リプレイ性に関しては各ミッションにチャレンジと呼ばれる別目標が設定されており、これを達成すると装備が使用可能になっていく仕組みになっている。この辺は初代GRでも似たような要素があったので違和感を覚えることはないはずだ。チャレンジの目標難度は一部高めのものも含まれており、この手のアンロック要素が好きな人にはやり応えのあるリプレイ性の高いキャンペーンといえるのかもしれない。
ただ1ミッションは複数のシーンで構成されている関係上ややくどい。前述のボリューム不足と相反することを書いているように思われるかもしれないが、僅かに空いた時間にチャレンジ目当てで一つミッションを遊んでみようかという時、シーンごとのムービーをフルで見せられたりとサックリとは終わらないという意味で書いている。ミッションを頭から始めるのではなくシーンごとに選んで開始できれば違った印象を持ったかもしれないだけに残念だ。
またキャンペーンとは別にゲリラモードと呼ばれる ――GRでいうなら100人FireFightの超進化版といったところだろうか ―― ゲームモードがオフラインでも遊べるようになっている。が、これが味方AIなしのプレイヤー一人で立ち回るゲームで陰々滅々とした内容となっている。せめて味方AIの人数なりと指定できればストレス発散・お祭り感覚で遊べたのではないだろうかとこれまた残念に思う部分である。
オフラインで見た場合のGRFSは決して面白くないわけではないのだが、遊べる部分があまりに淡白というかあっさりした印象をぬぐうことができない。システム/アクション部分がとても良くできているだけに余計に惜しいタイトルに感じられる。今後DLCなどで大きく化ける可能性もあるが、現状ではオフライン専門で遊ぶ人には少々勧めにくい構成といえる。