時刻を合わせよう……3、2、1、
(0000Z)2023年、あけましておめでとうございます。ここ数年コロナ関連でウンザリしてるところに戦争だの要人襲撃だのと昨年はびっくりするような年でしたので今年こそは、と言いたいところですが戦争はどうにも長引きそうですし。
この投稿は毎年恒例の原理主義視点で昨年一年のR6/GR界隈を振り返るシリーズなんですが、R6Eは触れようにも数値のあるソースがほとんどなくて凄く書きにくかったり。数値上で Game Pass との分離ができないんですよね。英国の月ごとセールスランキングに発売直後に一度だけ 4位で載った後さっぱり途絶えましたので多分そういう感じなんだと思います。ヘレフォードあたりで Eddie Price 最先任上級曹長泣いてそう。
てなわけで昨年はやはり「侵攻」が一番の(書きやすい)トピックかと思いますので、これにGRを絡めて。
昨年の侵攻がこれからのゲーム界隈にもたらすであろうインパクトは本当に大きくて、この組織/兵器はこのぐらいの性能/位置づけだろうというゲームデザイナーの認識が大崩壊したわけです。と言っても、それはあくまでゲームデザイナーの「認識」や遊ぶ側の「願望」との均衡点が現実とかけ離れていたことが明白になっただけなんですが、これからはもうこの認識のままでは出すわけにはいかない。情報を更新しないと出す前から陳腐化してしまうことが確定してしまうというとんでもない流れになってしまったわけです。冷戦の決着がようやくゲーム界隈にも行き渡った瞬間、という表現をしてもいいかもしれません。
で、その流れをモロに食らうのが「近未来の歩兵戦闘」をテーマの一つとして持つ我らがGRシリーズなんですね。
GRシリーズは作品ごとに「その当時の次世代戦闘思想/技術」が盛り込まれて「GHOST 凄い」を醸すのが重要な要素となっています。ですから現実で起きた軍事技術/思想面の衝撃を正しく取り込んでいかないと公式フォーラムは発売前から変な空気になること間違いなしです。だってGR原理主義者が大暴れしますから。そこだー、いけー、踏んじまえー、踵でー、かかとでー。そんなわけで侵攻を受けて扱いの変わりそうな要素をいくつか見ていきましょう。
まずはドローン。それも敵方が使うそれ。ドローンの脅威自体は侵攻前の他紛争で判明していました。注目すべきは新興国のドローン技術が市場のニーズを性能的にも価格的にもがっちり押さえているという点でして、これはつまりこれからの反米的な武装勢力は高い確率でドローンを投入してくる時代になったということでしょう。
ドローン自体はGRシリーズではすっかりおなじみの装備となってますが、これまでの作品では敵はドローンを持っていないか持っていても割と控えめな位置づけでした。控え目というのは、例えば直近のGRBでは敵もドローンを運用しているわけですが、これに対して公式フォーラムでは「ドローンうぜぇ、なくせや」の大合唱が起きていた時期がありまして。
ゲーム内でのドローンは主に偵察用途でしたが、現実はあっという間にゲームを超えて攻撃的な運用が始まっており、ぼんやりつっ立っているとどこからか聞こえる敵味方不明のドローン飛翔音とともに遥か頭上から特攻してきたりグレネードが降ってくるという「現実の戦場のクソゲー化」があまねく知れ渡ってしまった。
でもだからといってドローンを控え目にするとリアリティがないと酷評され、少し強めるとクソゲーと罵られる ―― この「遊ぶ側の認識と現実との大きなズレをゲームデザインでどうやって埋めるのか」という難題を Ubisoft は背負うことになったわけです。米軍の「自軍兵士にクソゲーを強いないよう」戦闘理論を研究している機関ですら模索の段階にあることを、ゲーム会社が取り組む羽目になったのですから相当高いハードルとなるのではないでしょうか。
次に戦闘車両や航空機の位置づけ。
昨年の侵攻では開戦初っ端の重大な戦略ミスで過剰に地上車輛がボコられる/鹵獲されまくる事態となりましたが、その辺の事情を差し引いても地上車輛は今のままでは戦闘理論的にも選択肢が細くなることがほぼほぼ確定したように思われまして(戦車不要論とはまた別ベクトル的。攻勢を「重く」するためには絶対に必要)。特に航空優勢をとれない戦場が第一次世界大戦レベルでの塹壕戦にまで後退するとは思ってもみなかったわけです。
もちろんこれは長距離砲撃の異常に高い命中率をたたき出すハイテク砲弾の登場や戦闘小隊のほぼ全員がなにがしかの対戦車兵器を携行しているという異常事態等々、複数の要素があってのことですがこれはゲームの戦場の設定 ―― とりわけ乗り物の位置づけに大きく影響を与えるのではないかなと。
特にドローン随伴の戦闘小隊全員が大小様々な対戦車兵器を持って哨戒任務に就いている光景はめまいがするというか、乗り物目線で見るとどう考えてもムリゲーです。中には射程 1,000mを超える撃ちっぱなしミサイルも混ざってて、そりゃあ遠く離れた場所から野砲で潰していきたくなる気持ちもわからないでもない。まさか今の時代にハイテク歩兵相手に白黒映像で見るような連装ロケット砲(無誘導)の斉射を観ることになろうとは思ってもみませんでした。
先日、米軍のMBTの次世代適応モデルが試案として公開されていましたが、ドローンとの連携や自律化にも対応するアプローチを採用していました。そういえば某国の次期主力戦闘機に盛り込みたい要素にドローン母機というのがあったようにも思いますので、乗り物へのドローン連携/随伴思想はほぼ確定路線と言ってもいいでしょう。
実はGRシリーズはGRFSにて中型自律随伴機が GHOST 側にも登場するコンセプトがあったのですが、当時はまだ戦闘ドローンに対する抵抗感というかそれが醸す過剰な SF 臭がキツ過ぎて発売前の公式フォーラムがプチ炎上する騒ぎがあって見送られました。
しかし、いよいよ時代が追い付いてきたわけで次のGRではある程度自走もできるけど高速で移動する場合は車輛で牽引するような中型(というか自分で車の後部やヘリの底面にフックしてぶら下がってくる感じの)随伴機が登場するかもしれません。随伴機には多数のドローン子機や対戦車誘導弾などを積むことも可能になり、前述の次世代戦闘車両に盛り込もうとしている思想を先取りする可能性もあるかも。こっそり砲迫レーダー付けとけばゲーム内で敵からの「砲撃」要素も回避可能な程度で組み込めますし。
1分27秒から一瞬 GHOST 側随伴機が。今見ても肩からミサイル出るのはやり過ぎに見えますが、それ以外はわりとすんなりと。
最後に戦闘スケールの見直し。
侵攻を受けてここ十数年の流行だった非対称戦から「同程度の軍事力を持つ組織戦」に移行する可能性も。たぶんここが一番の勘所というか、Ubisoft にとって重荷となる部分でしょう。
今の Ubisoft は実在する国や組織を連想させるような「敵」を設定できないヘタレ企業になってますので、新たに地球に住む生き物で無国籍の集まりの「いかにも悪そうな奴ら」をデザインしないといけないわけですが、この集合を「同程度の軍事力を持つ組織」にまでもっていくのが恐ろしく大変な作業でして、しかも困ったことに GHOST シリーズは作品を連ねることで年表を書けるぐらいに背景世界が出来始めてますので、突然ひょっこり国家でも何でもない「同程度の軍事力を持つ組織」が現れると本当にびっくりするわけです。
Ubisoft は使い勝手のよいヴィラン的な「悪の(巨大軍事)組織」を創造したくて仕方ないんでしょうが、そんなの他のシリーズでやれよと眼窩に妖しい光を宿す原理主義者が「uah.. ..ge..geopo..litiiics..」とかうめき声をあげながらフォーラムを徘徊してますのでどうなることやら。GR シリーズ本筋に謎のヴィラン連合が出るようになったらもうこのブログも閉じてもいいような気も。
一部のゲームメディアによるとすでに次のGRシリーズが動き始めているそうですが、100人 PvP のフロントライン(開発延期になったまま消息不明にw)のシステム再利用からのスタートになる場合はあれの残滓といいますかコンセプトの残り香を嗅がされることになるかもしれないので、ちょっとだけ覚悟しといたほうがいいかもしれませんね。
まぁ、こんな感じで今年もよろしくお願いいたします。