まずは動画をご覧頂きましょう。
Takedown: Red Sabre はいまどきのFPSが無くしてしまったタクティカルな要素をなんたらかんたらというのが売りなんですが、この動画についたコメントを眺めておりますと「ただ撃って覗いてそして撃ってるだけじゃん、これのどこがタクティカルなの!?」という手厳しいコメントがあったりして発売前からわりと焦げくさ~い臭いがしているようなのです。
同動画には「資金力の乏しい小さな開発会社が作ってんだから大目にみてやれよ」みたいな援護射撃も行われてはいるんですが、たしかに動画は「撃って覗いてカニカニばっきゅ~ん☆」しているだけで原理主義者としていろいろと疼く内容に見えてしまいます。
当の製作側はあくまで「このゲームはすげータクティカル」と主張しておりまして、ここまでの流れを見るに「この感覚のずれはどこから来てるの!?」という話になるわけですが、これはつまり小学校の国語の時間ばりの「このときの作者の気持ちを考えてみよう」「自分はどう感じたのか整理してみよう」と同レベルのわりとどうでもいい流れのような気もします。
当サイトが用意する模範解答としましては「製作側は通路をバリバリ乱射しながら跳ね回り、オープンスペースではGLによる盛大な花火大会が始まるお祭りFPSの会場からこの動画を自信満々に配信しているが、一方の原理主義者は森の奥深くR6が静かに眠る沼から顔だけ出してこの動画を受信してニヤニヤ笑っているのであり、話がかみ合うはずが無い」というものであります。この回答で配点の半分ぐらいは取れると思います!(ぇ
残りの点数を取るにはもう少し違う方向から考察を進める必要がありそうな感じです。
そもそも「ストラテジー」とか「タクティクス」はとっても概念的でその内容や具体的なイメージを一切共有できないあまりに「あいまい」「自由奔放」「わがまま」な言葉の筆頭/双璧をなしていると私は勝手に思ってたりするんですが(簡単に共有できてしまうとそれはあまり価値のないストラテジーであり退屈なタクティクスなのであり、この二つは簡単に共有できないことに価値がある言葉ではないかと)、そんな負けワードを宣伝文句にうっかり同時に使っちゃうとどういう齟齬が生じるかというとてもいい教材になるといいましょうか、投資コンサルタントばりに胡散臭い商品になっちゃうといいましょうか、最近カタカナをやたら使う営業は舌抜いちゃえよとか、NHKもカタカナちょっと多すぎだよとか、集中豪雨の危険箇所を解説するのにいきなり「アンダーパス」とか平気で使っちゃうとか受信料返せよというか、もうちょっと新しい漢字を作ることも含めて日本語として文化としてきちんと消化しろよとか思ってしまう当サイト管理人としましては、では原理主義者の言うタクティクス/タクティカルとは何か?道具を使うのがタクティカル?それとも実在する特殊部隊の行動を可能な限り再現するのがタクティカルなの!?とか思ってしまうわけです。タクティカル、タクティカル…… ―― そもそもタクティカルって何?
タクティカル ―― 戦術的な何か。「戦術的」というのはいろいろな解釈があるんでしょうけど、現場の裁量で敵の優勢な要素を封じつつ劣る要素を集中的に叩く試み。これらを尽くして今ある戦力で少しでも有利に組み合う ―― その試行がタクティクス/タクティカルということなのではないかと、ビールを飲みながら考えてみました。すみません。少し格好つけてます。
では動画の中でどのあたりがタクティカルか。
死んだら終わりだから、死なないように行動しないといけない、これはタクティカルか? ―― これ自体はタクティカルというよりタクティカルの入り口、タクティカルでないといけない理由、動機付けの一つといったところでしょうか。
見張りを相手に物陰から飛び出して正面から撃ち倒す、これはタクティカルか? ―― 微妙。飛び出して撃つのは最後の手段で、それを行う前に他に何か手立てが無いか考えそれを試すのがタクティカル。見張りの注意がそれるのを待ったり、打ち倒すにしてもこちらの露出を可能な限り抑え隙あらば倍の火器を戦闘エリアへ滑り込ませる、少しでも有利な状態で射撃戦を開始するための試行をする、それがタクティカルな感じ?
オープンスペースに一人で飛び出し、FG投げ込まれたり、吹き抜けの2階から複数の脅威に蜂の巣にされる、これはタクティカルか? ―― うん、そうね、これはまぁ、うん、酷いね。
確かにコメントの通りこの動画からはあまり「タクティカルな部分」を見て取ることはできない感じがします。せめて、通路を進むときのチーム内での躍進の様子をもう少し入れてくれればなと思うんです。チームベースでの移動というのはかなりタクティカルな部分であり、あらゆるリスクを想定し共有しそれに応じて援護と移動を複雑な位置取りで繰り返す必要があるわけですから。
ところでタクティクス/タクティカルというのは、用意されて楽しむものなのか ―― 否。基本的にこれらはあるルールがあってそのルールの中で勝ちたいと欲したプレイヤー側から発するものであって、間違っても製作側がここでこういうタクティクスを発動してね!とかできるものではないわけです。ある程度誘引することはできるかもしれませんが、やはり最後はプレイヤーの才覚によるわけです。
そもそも製作側がうんざりしているお祭り系FPSもあのゲームシステムにあっては「乱射して飛び跳ねる」ことに勝機を見出したプレイヤーが発したタクティカルな行動なのであり、手榴弾をばら撒くのもやっぱりプレイヤー発のタクティクスなわけです。つまり製作側がいいたいのは「お祭りFPSはタクティカルではない」「飛び跳ねるのはタクティカルではない」ということではなく「そんな発想しか生まれてこないルールシステムはクソ」ということなんだろうなと思うわけです。
なんだか話がまとまらなくなってきましたが、冒頭のコメントで「これのどこがタクティカルなんだよ?」というのはですね、これまでのタクティカルの解釈を基に補完しますと「(あまりにへぼい動きしかしない隊員にワロタ)これの(つまりはこの動画の)どこがタクティカルなんだよ?(何一つ勝つための発想をしてねーじゃねぇか。動画作り直せボケェ)」ということなんだろうなと思うのであります。つまりは製作側はタクティカルな発想ができるルールであることを動画でたっぷり示して「是非買って遊んでくださいね!」とアピールしないといけないのに、どういうわけか何一つ目的を果たしていない謎の動画を世に送り出してしまったわけです。
そんなわけで是非とも Serellan LLC には Takedown がルールとしてシステムとして「どのぐらい幅広く勝つための発想を許してくれるか」という懐の深さが伝わる動画を出してほしいと思うのであります。Takedown は Steam ですでに予約が始まっており、お値段は$15、2013年9月20日に解禁されるとのことであります。